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科目ごとのノート
数学
偏微分方程式(PDE),特に今学習されている双曲型(Hyperbolic type) PDEについて,一番最初の「そもそもPDEとは何か?」という部分から,解法,そしてその物理的な意味まで,順を追って丁寧に解説します.
まず,常微分方程式(ODE)との違いから始めましょう.
常微分方程式 (ODE): 独立変数が1つだけの微分方程式. 例:物体の運動 \(md^2x/dt^2 = F\).変数は時間\(t\)のみ.
偏微分方程式 (PDE): 独立変数が2つ以上ある微分方程式. 例:海の波の高さ \(u\).波の高さは,場所\(x\)と時間\(t\)の両方によって変わります.この\(u(x, t)\)に関する方程式がPDEです.
PDEは,物理現象,工学,金融など,時間と空間(あるいはそれ以上の変数)の中で変化する量を記述するための言語なのです.
2階線形のPDEは,その性質によって大きく3種類に分類されます.
この式の係数から判別式 \(\Delta = B^2 - 4AC\) を計算し,その符号によって分類します.
双曲型 (Hyperbolic, \(\Delta > 0\)):
放物型 (Parabolic, \(\Delta = 0\)):
楕円型 (Elliptic, \(\Delta < 0\)):
このように分類することで,方程式を見ただけで「これは波の問題だな」「これは熱の問題だな」と現象の性質を理解でき,適切な解法を選択できるようになります.
ここからが本題です.双曲型PDEの最も代表的な例である,1次元波動方程式の解法を見ていきましょう.
ここで,\(u(x,t)\)は位置\(x\),時刻\(t\)における弦の変位などを,\(c\)は波の伝わる速さを表します.
この方程式を解くための,非常にエレガントな方法がダランベールの解法です.
ステップ1:変数変換 新しい変数(特性座標)\(\xi\) (クシー) と \(\eta\) (イータ) を導入します.
\(\xi\)は速さ\(c\)で左に進む座標系,\(\eta\)は速さ\(c\)で右に進む座標系と解釈できます.
ステップ2:連鎖律(Chain Rule)で微分を変換 \(u\)を\(\xi\)と\(\eta\)の関数とみなし,\(\partial/\partial x\)と\(\partial/\partial t\)を\(\partial/\partial \xi\)と\(\partial/\partial \eta\)で書き直します. (計算は少し複雑ですが,結果は以下のようになります)
すると,元の複雑な波動方程式は,信じられないほど簡単な形になります.
ステップ3:積分して解を求める この簡単な式を積分していきます. まず\(\eta\)で積分する:\(\frac{\partial u}{\partial \xi} = \phi(\xi)\) (\(\phi(\xi)\)は\(\xi\)だけの任意の関数) 次に\(\xi\)で積分する:\(u(\xi, \eta) = \int \phi(\xi)d\xi + G(\eta)\) \(\int \phi(\xi)d\xi\)も\(\xi\)だけの任意の関数なので,これを\(F(\xi)\)と書き直すと,
ステップ4:元の変数に戻す 最後に,\(\xi=x+ct\)と\(\eta=x-ct\)を代入して,元の\(x, t\)の世界に戻します.
これが波動方程式の一般解で,ダランベールの解と呼ばれます.
この解 \(u(x,t) = F(x+ct) + G(x-ct)\) は,非常に明快な物理的意味を持っています.
つまり,双曲型PDE(波動方程式)の解は,**互いに逆方向に進む2つの波の重ね合わせ(足し算)**で表現できる,ということを示しています.
無限に長い弦を考え,時刻\(t=0\)で以下のような初期状態を与えます.
この初期条件をダランベールの解に適用すると,\(F\)と\(G\)は初期条件\(f, g\)を使って書き表せ,最終的に以下の解が得られます.
これが初期値問題の完全な解です.
初期速度が0の場合,解はさらに簡単になります.
これは,**「最初の波形\(f(x)\)が,半分の高さを持つ2つの波に分裂し,それぞれが左右に伝播していく」**ことを意味します.
もし最初の形\(f(x)\)が三角形だったら,半分の高さの三角形が2つ,左右にサーッと広がっていく様子が,この式から見て取れるのです.これが双曲型PDEが描く「波の伝播」の具体的な姿です.
RLC回路の話を、数式をできるだけ使わずに、もっと直感的で初心者にも分かりやすいように解説しますね。
電気回路の話はイメージしにくいので、まずは**「ブランコを押す人」**に例えてみましょう。
このブランコには、3つの「邪魔者」がいます。これがRLC回路の R(抵抗)、L(コイル)、C(コンデンサ) にあたります。
あなたがブランコを押し始めた瞬間を想像してください。
最初の数回(過渡状態): ブランコはグラグラと不規則に揺れたり、あなたの押すタイミングとズレたりしますよね。これが「過渡状態」です。回路で言えば、スイッチを入れた直後の不安定な状態です。
しばらく押した後(定常状態): やがて、あなたの押すリズムとブランコの揺れるリズムが完全に合ってきて、毎回同じ高さまで、安定して大きく揺れ続けます。これが「定常状態」です。
つまり、定常状態とは、回路が電源のリズムにすっかり馴染んで、安定した電気の波がずーっと続く状態のことです。私たちが知りたいのは、この安定した状態のときに、ブランコが「どのくらいの高さまで(振幅)」「どんなタイミングで(位相)」揺れるのか、ということです。
さて、あなたが一定のリズムで「押す、引く」を繰り返すと(正弦波の電源)、安定して揺れるブランコ(定常状態の回路)では何が起きるでしょうか。
ブランコの高さは、あなたの押し方と、3人の邪魔者(R, L, C)の邪魔の仕方で決まります。 回路でも同じで、コンデンサに溜まる電気の量(電荷の振幅)は、電源のパワーと、RLCの邪魔の度合い(専門用語でインピーダンス)によって決まります。
面白いのは、コイル(L)とコンデンサ(C)の邪魔の仕方は、あなたの押すリズム(周波数)によって変わることです。
このバランスがちょうど良い特定の速さ(共振周波数)で押すと、ブランコがものすごく大きく揺れるように、回路にも非常に大きな電気が流れます。
ブランコを押しても、あなたが「押した」瞬間にブランコが一番高くなるわけではありませんよね?少しタイミングがズレます。
回路でも同じように、電源が「今が最大パワーだ!」というタイミングと、コンデンサの電気が満タンになるタイミングには、少し**ズレ(位相のズレ)**が生じます。このズレ方も、3人の邪魔者のバランスによって決まります。
ここまでの話は、あなたが「押す、引く、押す、引く…」と綺麗なリズム(正弦波)でブランコを押す場合でした。
では、もしあなたの押し方が**「グッ、グッ、(休み)、グッ、グッ、(休み)…」**のような、もっと複雑なリズム(矩形波など)だったらどうなるでしょう?ブランコの揺れ方を予測するのは、とても難しそうですよね。
ここで登場するのがフーリエ級数という魔法の道具です。
オーケストラの「ジャーン!」という複雑な和音を聴いたとき、耳の良い人なら「今の音は『ド』と『ミ』と『ソ』の音が混ざっているな」と分かります。
フーリエ級数は、これと全く同じことを電気の波で行います。
フーリエ級数の役割: どんなに複雑な形の波(電圧)でも、「綺麗な波(正弦波)A」+「綺麗な波B」+「綺麗な波C」… という単純な波の足し算に分解してくれるのです。
<br>
RLC回路は「素直な」回路なので、**「重ね合わせの理」という便利なルールが使えます。これは、「別々に考えて、後で全部足し算すればOK」**というルールです。
つまり、複雑なリズムの電源が来ても、慌てる必要はありません。
【分解】 まず、フーリエ級数を使って、複雑なリズムをたくさんの「単純なリズム」のセットに分解します。
【個別計算】 次に、分解された一つ一つの単純なリズムに対して、回路がどう反応するか(ブランコがどう揺れるか)を計算します。これは、私たちがすでにやり方を知っている簡単な計算です。
【合体】 最後に、全部の計算結果を足し合わせます。すると、元の複雑なリズムに対する最終的な答えが手に入るのです!
結論として、フーリエ級数を使うのは、一見して手に負えない複雑な問題を、たくさんの「解き方を知っている簡単な問題」に分解して、一つずつ片付けていくための、非常に賢い作戦なのです。
科目ごとの授業ノート
東北大学
専門科目
数学物理学演習Ⅱ
この章では,変数が実数だけでなく複素数にまで拡張された「複素関数」について学びます.実数関数と比べて,複素関数には非常に強力で美しい性質が数多くあり,それらを応用することで,物理学や工学における様々な問題を驚くほど簡単に解くことができます.特に「留数の定理」は,難しい実数の積分計算を可能にする強力なツールです.
まず基本となる複素数 \(z\) は,実数 \(x\) と \(y\),そして虚数単位 \(i\) (\(i^2 = -1\)) を用いて次のように表されます.
\(z = x + iy\)
複素数は,横軸を実部,縦軸を虚部とする2次元の平面(複素平面またはガウス平面)上の一点として表現できます.
複素数は,原点からの距離 \(r\) と,実軸の正の方向から反時計回りに測った角度 \(\theta\) を用いても表現できます.これを極座標表現と呼びます.
これをオイラーの公式 \(e^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\theta\) を用いてまとめると,非常にすっきりした形になります.
\(z = x + iy = r(\cos\theta + i\sin\theta) = re^{i\theta}\)
この表現は,特に複素数の掛け算や割り算を考えるときに非常に便利です.
複素数 \(z\) を入力すると,別の複素数 \(f(z)\) が出力されるような関数を複素関数と呼びます.出力される複素数 \(f(z)\) もまた実部と虚部に分けることができ,実部を \(\Phi(x,y)\),虚部を \(\Psi(x,y)\) とすると,次のように書けます.
\(f(z) = \Phi(x,y) + i\Psi(x,y)\)
教科書の例を見てみましょう.\(z = x + iy\) を代入すると,
\(f(z) = (x+iy)^2 + 3(x+iy) - 4\) \(= (x^2 - y^2 + 2ixy) + (3x + 3iy) - 4\) \(= (x^2 + 3x - y^2 - 4) + i(2xy + 3y)\)
この場合,
となり,複素関数が \(x\) と \(y\) の2つの実数関数で構成されていることがわかります.
実数関数では,変数が一方向からしか近づけないため,微分の定義は単純でした.しかし複素平面上では,点 \(a\) に近づく方法は無限にあります.複素関数が点 \(a\) で微分可能であるためには,どの方向から近づいても極限値が同じになる必要があります.微分の定義式は実数関数と同じ形です.
\(f’(a) = \lim_{z \to a} \frac{f(z) - f(a)}{z-a}\)
この「どの方向から近づいても同じ値になる」という厳しい条件から,非常に重要な関係式が導かれます.教科書のように,2つの簡単な経路で近づいてみましょう.
経路1:実軸に平行に近づく (yを固定) このとき,微分係数は次のようになります. \(f’(a) = \frac{\partial \Phi}{\partial x} + i\frac{\partial \Psi}{\partial x}\)
経路2:虚軸に平行に近づく (xを固定) このとき,微分係数は次のようになります. \(f’(a) = \frac{1}{i}\left(\frac{\partial \Phi}{\partial y} + i\frac{\partial \Psi}{\partial y}\right) = \frac{\partial \Psi}{\partial y} - i\frac{\partial \Phi}{\partial y}\)
関数が微分可能であるためには,これら2つの結果が等しくなければなりません.実部と虚部をそれぞれ比較すると,
\(\frac{\partial \Phi}{\partial x} = \frac{\partial \Psi}{\partial y}\) , \(\frac{\partial \Psi}{\partial x} = -\frac{\partial \Phi}{\partial y}\)
これがコーシー・リーマンの関係式です.ある領域内の全ての点でこの関係式を満たす(=微分可能な)関数を正則関数と呼びます.正則関数は,複素関数論において中心的な役割を担います.
先ほどの例 \(f(z) = z^2 + 3z - 4\) で確認すると,
となり,コーシー・リーマンの関係式を満たしていることがわかります.
ここからが複素関数論の真骨頂です.正則関数には,驚くべき積分の性質があります.
閉じた積分経路 \(C\) の内部で関数 \(f(z)\) が完全に正則(特異な点がない)ならば,その経路に沿った周回積分は必ずゼロになります.
\(\oint_C f(z)dz = 0\)
これは,積分経路をどのように選んでも,その内部に関数の「異常な点」がなければ結果は0になるという,非常に強力な定理です.
では,積分経路の内部に正則でない点(特異点)が1つだけある場合はどうでしょうか.例えば,\(g(z) = \frac{f(z)}{z-a}\) という関数を考えます.この関数は点 \(z=a\) で分母がゼロになるため,正則ではありません.この場合,積分の値はゼロにならず,驚くべきことに,特異点での関数 \(f(z)\) の値 \(f(a)\) だけで決まります.
\(\oint_C \frac{f(z)}{z-a} dz = 2\pi i f(a)\)
この公式は,ある点の関数の値 \(f(a)\) を,その点を取り囲む経路上の積分値から求められることを示しており,非常に重要です.教科書の図25.1は,特異点 \(a\) を小さな円でくり抜いた新しい積分経路 \(C^\) を考えると,その内部には特異点が存在しないため,\(C^\) に沿った積分は0になることを利用して,この公式を導いています.
コーシーの積分公式をさらに一般化したのが留数の定理です.積分経路 \(C\) の内部に複数の特異点 \(a_1, a_2, \dots, a_n\) がある場合,周回積分の値は,それぞれの特異点が積分にどれだけ「貢献」するか,その「貢献度」の合計で決まります.この貢献度のことを留数 (Residue) と呼びます.
\(\oint_C f(z)dz = 2\pi i \times (\text{内部にある全特異点の留数の和})\)
これは,複雑な積分計算が,各特異点での留数を求めるという代数的な計算に置き換えられることを意味します.
\(\oint_c \frac{z^2}{(z-3)(z+i)}dz\) を考えます.被積分関数の特異点は,分母が0になる \(z=3\) と \(z=-i\) です.
積分経路が \(|z|=2\) の場合 この円の内部に含まれる特異点は \(z=-i\) だけです. これはコーシーの積分公式 \(\oint_C \frac{f(z)}{z-a} dz = 2\pi i f(a)\) を使って解けます. ここで \(f(z) = \frac{z^2}{z-3}\),\(a = -i\) とおくと, \(\text{積分値} = 2\pi i f(-i) = 2\pi i \left(\frac{(-i)^2}{-i-3}\right) = 2\pi i \left(\frac{-1}{-3-i}\right) = 2\pi i \left(\frac{1}{3+i}\right)\) \(= \frac{2\pi i (3-i)}{(3+i)(3-i)} = \frac{2\pi (3i - i^2)}{9 - i^2} = \frac{2\pi(1+3i)}{10} = \frac{\pi}{5}(1+3i)\)
積分経路が \(|z|=4\) の場合 この円の内部には,\(z=3\) と \(z=-i\) の両方が含まれます.この場合は留数の定理を用います.
留数の定理より,積分値は \(\oint_C f(z)dz = 2\pi i \left( \text{Res}(f, 3) + \text{Res}(f, -i) \right) = 2\pi i \left(\frac{9}{3+i} + \frac{1}{3+i}\right)\) \(= 2\pi i \left(\frac{10}{3+i}\right) = \frac{20\pi i(3-i)}{(3+i)(3-i)} = \frac{20\pi(3i-i^2)}{10} = 2\pi(1+3i)\)
このように,複素関数の強力な性質を理解することで,一見複雑な積分も系統的に解くことができるようになります.
この章では,第25章で学んだ複素関数の強力な性質が,物理学や工学の具体的な問題をいかに簡潔に解き明かすかを見ていきます.特に,振動,電気回路,流体力学といった分野でその威力がいかんなく発揮されます.
物理の世界では,バネと重りのような「振動」現象は,次のような2階の線形常微分方程式で記述されることがよくあります.
ここで,\(x\) は変位,\(m\) は質量,\(C\) は抵抗,\(k\) はバネ定数,右辺は外部から加わる周期的な力(強制力)です.
この方程式を解くのは,特に右辺の \(\cos(\omega t)\) があるために少々面倒です.しかし,ここで複素関数を用いる「トリック」が非常に有効です.
複素数化: 求めたい解 \(x(t)\) を実部とする新しい複素関数 \(z(t) = x(t) + iy(t)\) を考えます.そして,強制力もオイラーの公式 \(e^{i\omega t} = \cos(\omega t) + i\sin(\omega t)\) を用いて複素数に拡張します.すると,元の方程式は次のような複素数の方程式になります.
解の仮定: この複素方程式の特殊解を,\(z = Be^{i\omega t}\) という形だと仮定します(\(B\) は定数複素数).なぜこの仮定がうまくいくかというと,\(e^{i\omega t}\) は微分しても形が変わらず,係数が前に出るだけだからです.
代数方程式への変換: \(z = Be^{i\omega t}\) を複素方程式に代入すると,微分が単なる掛け算に変わります.
これらを代入すると, \(m(-\omega^2 Be^{i\omega t}) + C(i\omega Be^{i\omega t}) + k(Be^{i\omega t}) = f_0 e^{i\omega t}\) 両辺の \(e^{i\omega t}\) を消去すると,微分方程式は \(B\) についての単純な代数方程式になります. \(B{(k - m\omega^2) + iC\omega} = f_0\)
解の導出: これにより,複素数の振幅 \(B\) が簡単に求まります.
実部を取り出す: 最後に,私たちが本当に欲しかった解 \(x(t)\) は,複素数の解 \(z(t) = Be^{i\omega t}\) の実部を取ることで得られます. \(x(t) = \text{Re}(z) = \text{Re}(Be^{i\omega t})\)
この方法は,三角関数の面倒な加法定理や合成の計算を,複素数の単純な四則演算に置き換えるもので,物理学や工学で広く使われる非常に強力なテクニックです.
電気回路,特にコイルやコンデンサーを含む交流回路の解析も,複素関数を用いることで劇的に簡単になります.ここでのキーコンセプトは複素インピーダンスです.
直流回路では,電圧 \(V\),電流 \(I\),抵抗 \(R\) の間にオームの法則 \(V = RI\) が成り立ちました.交流回路では,コイルやコンデンサーの働きにより電圧と電流の間に「位相のずれ」が生じるため,この法則はそのままでは使えません.
そこで,電圧と電流を複素数 \(V = V_0 e^{i\omega t}\),\(I = I_0 e^{i\omega t}\) として扱います.すると,各部品での電圧降下は次のようになります.
回路全体では,\(V = V_R + V_L + V_C\) なので,
ここで,オームの法則 \(V = RI\) と見比べると,抵抗 \(R\) の代わりに \(\left{R + i\left(\omega L - \frac{1}{\omega C}\right)\right}\) という複素数が入っていることがわかります.これを複素インピーダンスと呼び,\(Z\) で表します.
\(Z = R + i\left(\omega L - \frac{1}{\omega C}\right)\)
これにより,交流回路は \(V = ZI\) という,まるでオームの法則のような非常にシンプルな式で記述できます.複素インピーダンス \(Z\) は,単なる抵抗だけでなく,位相のずれの情報もすべて含んだ,非常に便利な量なのです.
複素関数は,流体力学や電磁気学で現れる特定の偏微分方程式系を解くためのエレガントな手法を提供します.
流れの無い(\(\nabla \cdot \vec{A} = 0\)),渦の無い(\(\nabla \times \vec{A} = 0\))ような理想的な2次元のベクトル場 \(\vec{A} = (u, v)\) を考えます.これらの物理的な条件は,数式で書くと次のようになります.
ここで,これらの式を変形すると, \(\frac{\partial u}{\partial x} = -\frac{\partial v}{\partial y}\) \(\frac{\partial v}{\partial x} = \frac{\partial u}{\partial y}\)
この式は,第25章で学んだコーシー・リーマンの関係式と本質的に同じ構造をしています.速度ポテンシャル \(\Phi\) と流れ関数 \(\Psi\) を導入し, \(u = \frac{\partial \Phi}{\partial x} = \frac{\partial \Psi}{\partial y}\) \(v = \frac{\partial \Phi}{\partial y} = -\frac{\partial \Psi}{\partial x}\) とすることで,複素ポテンシャル関数 \(f(z) = \Phi(x,y) + i\Psi(x,y)\) が正則である条件(コーシー・リーマンの関係式)と,ベクトル場が渦なし・湧き出しなしの条件とが完全に一致します.
この発見のすごいところ: これはつまり,「適当な正則関数を一つ見つけてくれば,その実部と虚部は,物理的に意味のある(渦なし・湧き出しなしの)流れ場を自動的に与えてくれる」ということを意味します.難しい偏微分方程式を直接解く代わりに,扱いやすい複素関数を探す問題にすり替えることができるのです.
教科書では,直角の角を回る流れを解析するために,\(f(z) = Cz^{2/3}\) という関数を用いています.この関数の実部と虚部から速度を計算すると,角(原点)に近づくほど (\(r \to 0\)),速度の大きさが \(U \propto r^{-1/3}\) となって無限大に発散することがわかります.
これは物理的に,L字型の部材の角に応力が集中し,そこから破壊が起こりやすいことなど,現実の現象をうまく説明しています.
数学Ⅱ
全学教育
LU分解は、正方行列 A を下三角行列 L と上三角行列 U の積に分解する手法で、主に連立一次方程式を効率的に解くために用いられます。
LU分解は、行列 A を A = LU の形に変形します。
この分解により、行列の重要な特性を判断できます。
LU分解の計算は、**ガウスの消去法(前進消去)**に基づいています。
LU分解は、その効率性と数値的な安定性から、様々な計算に応用されます。
$Ax = b$ という問題を、以下の2つの簡単なステップに分割して解きます。
この方法は、逆行列を直接計算するよりも計算量が少なく、数値的にも安定しています。
逆行列 $A^{-1}$ を求めることは、$Ax_j = e_j$($e_j$ は単位ベクトル)という方程式を、列の数だけ解くことと同じです。一度 A = LU と分解してしまえば、あとは前進・後退代入を繰り返すだけで、効率的に逆行列を計算できます。
方程式 $Ax = b$ に厳密解がない場合、最小二乗法で誤差を最小化する近似解を探します。しかし、行列 A が可逆であれば、必ず一意の厳密解が存在します。この場合、最小二乗解は厳密解と一致し、誤差はゼロとなります。
今回のQR分解に関する問題群を解く上で必要となる理論的背景や知識を,復習しやすいようにセクションごとにまとめます.
このセクションを理解するには,QR分解の構成要素である直交行列 \(Q\) と上三角行列 \(R\) の基本的な性質を把握することが重要です.
このセクションは,QR分解を実際に計算するアルゴリズムであるグラム・シュミットの正規直交化法の理解が中心となります.これは,\(A\) の列ベクトルから,順々に正規直交なベクトル(\(Q\) の列ベクトル)を生成していくプロセスです.
このセクションでは,QR分解が線形代数の問題を解くために,いかに強力なツールであるかを学びます.